自転車で富士山スカイライン登ってきた

富士山5合目までの舗装路でのアプローチは3通りある。
辿り着く場所はそれぞれ異なるが、まあ五合目という意味では同じだ(新5合目と呼ばれていたりもするが)。

1つ目は富士山の北側から始まる富士スバルライン。
Mt.富士ヒルクライムでお馴染みのコースで、3つの中では最も難易度が低い。
スタート地点の標高が高いため、24kmで約1200mの獲得標高。
行ったことないが、斜度も一定で走りやすいらしい。

2つ目は富士あざみライン。
ルートラボによれば、須走というところを始点とすると、平均10%の勾配が10km続くというコースである。
これだけでも苦しさは十分に想像できるが、実際に走ると、15%とか20%とかいう斜度が当たり前のように現れるらしい。
まさに日本のアングリルと呼ぶべきコースである。日本中見渡しても屈指といって良いと思う。
大阪にある暗峠の方がよっぽどキツイという声もあるが、私からみたらどっちも同じようなものだ。

3つ目は今回行った富士スカイライン。難易度は3つの中で真ん中。
真ん中なのだが、あくまで相対的に真ん中であって、例えばヤビツ峠と比べるとよっぽど厳しい。
このコースはさらに、御殿場方面からのアプローチと、富士宮方面からのアプローチの2通りに分けられる。
今回は富士宮からのルートを採用。KOH Mt.富士というイベントでも使われている。
なお、冬期は途中から閉鎖されているので注意。今年は4/28に閉鎖解除された。

さて、体力ゲージ満タンで登り始めたいので、当然輪行。こだまに乗って新富士で下車。
輪行解除して走り始めると、富士山に見下ろされる。

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でかい。何度みてもでかい。
富士山を正面に見据えて走っていると、魔王か何かに見下されている気分になる。
「フハハハ、勇者よ、ここまで登ってくるがよい」みたいな。

富士宮までは迷わないように比較的大きな道路を選んだが、結構交通量が多い。改善の余地あり。
県道139号を走り、登山道入り口という交差点に到着。ここから約30km。ひたすら登る。標高差2200m。
これだけ長い登坂は初体験なので、とにかく抑えて登る。一気に登り切る気はさらさらなく、適度に休憩しながら 登ろうという目論見だが、なにせ30kmである。抑えすぎるくらいに抑えないとどうなるかわからない。

しばらく走ると、すっかり山のなかという様相。
つづら折りを超えると、直線でひたすら登る区間が現れる。この時点で10km以上、標高差800程度登っており、抑えめで登っているとはいえ、じわじわ体力を削られているところにこの攻撃はきつい。タイムなんか知るか、ということでひたすらゆっくり登る。水が切れる。キャンプ場のようなところがあったので入ってみると売店があったので水分購入。再出発。

さらに行くと、ここまで走ってきた周遊区間から登山区間へと入るゲートが現れる。
冬期はここから先は閉鎖されており、また、夏季はマイカー規制が行われる(自転車はOK)。
ゲートを通過したところで、あらかじめ買っておいたセブン-イレブンの赤飯おにぎりを食べる。うまい。
コンビニ(個人的には特にセブン-イレブン)の存在がどれだけ世の中の自転車乗りの助けになっていることか。

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再び登り始める。目の前に富士山が見える。
富士山クラスになると、裾野が凄まじく広いので、「富士山を登っているのに目の前にあるのは富士山」という 奇妙な体験ができる。
富士山のアイデンティティはあの頂上付近の白と黒のギザギザにある(と勝手に思っている)ので、特にその感じが強い。

そんなことを考えながら登る。淡々と書いているが、この時点で20km登っており、体力的にかなりきつい状況である。
ゲートからは残り12.8km。本格的なヒルクライム1本分相当。軽い絶望感に襲われるが、ゆっくり行けばどうにでもなるだろうという気持ちで登り続ける。結果的に登りきれたというのをどうにかなったとみなすなら一応どうにかなったわけだが。

今回一番きつかったのが、残り9kmから5kmくらいの区間だったように思う。この時点で体力ゲージはほぼ空に近く、駐車場を見つけては休憩を挟んでいたが、回復は到底望めず。ゾンビのような様相で、ゾンビが歩くよりはちょっと早いくらいの速度で登る。このあたりになると、足が痛いとか、心拍がつらいというより、脳が運動を拒否しているような感じがしてくる。補給が足りていなかったかもしれない。登坂はとにかくカロリーを消費する。食べ過ぎるくらいで丁度よい。

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ボロボロになりながら、七曲り駐車場にたどり着く。休憩。スポーツようかんを喰らう。
残りはまだ5kmあるが、ここ以降、少しだが楽になった記憶がある。名前の通りつづら折りが続くので、カーブを除けば斜度が緩やかなためだろうか。とは言え相変わらずゾンビ状態である。適当に休みを入れつつ進む。

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4合目にたどり着く。
何合目というのは均等に分割されているわけはないようで(4合目は標高2300m地点)、4合目から5合目までは目と鼻の先程度しか離れていないはずだが、いかんせんゾンビ状態なので、鼻が凄まじく長いか、目がおでこの上にあるように感じる。デッサンちゃんとしろ。

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止まない雨だってこの世界のどこかにはあると個人的には思うが、登り続ければどこかにはたどり着く。
ゾンビにだってたどり着ける場所はある。それが富士山5合目だったりする。
登り切った。

と思ったが展望台やらレストランにはもうちょっとだけ登る必要がある。 歯磨き粉を絞りだすように残り少ない体力をかき集める。 道路は続いていたが、もう嫌だ、となったので、自転車担いで階段を登る。

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人はそれほどいなかった。時間も遅めだったので、レストランは閉まっていた。
それをみた瞬間、また来よう、と思った。 次はもっと楽に登れるはずだ。ダブルボトルにしよう。輪行袋は駅のロッカーに預けるのもありだろうか。

ネックウォーマーやらウインドブレーカやらグローブやら装備して下りに備える。 下りはそれはそれで神経を使うし、指がしびれる。油圧ディスクはどんなもんなのだろうか。 とはいえ、登りに比べたら無視できるくらいの苦労であっという間に下りきる。

帰路につく。新幹線は本当に素晴らしい乗り物だと思う。揺れないし。 次はどこに行きましょうかね。